会社の売上や資産の管理を行う経理部ですが、経理部員が行う業務は多岐に渡ります。
新入社員が新卒で経理部に配属されたら、多くの場合は売上関連業務を任されることになると思います。
(損益計算書の一番上の科目であり、営業外や特別と違い、特殊な取引がなく分かりやすいので)。
実際、私が勤務している会社の経理部でも、新しく入ってきた人は売上関連業務を担当するという慣習があります。
そこで、一年半大手メーカーの経理部において売上業務を担当したほたぺこが、売上業務について簡単に紹介します。
筆者情報
- 東証一部上場企業の経理部で勤務中
- 配属後に簿記二級を取得
目次
経理部の新卒社員が任される売上関連業務
①数量・総売上高の集計
私は単体(海外は含まない、日本国内のみ)のチームに所属しているため、日本国内での売上関連の集計と分析を行っています。
国内の売上は、月ごとにシステムで集計され、その翌月に出力されます(つまり、三月の一か月間の売上が正確に分かるのは、翌月の四月になるということです)。
その出力されたデータから、製品(自社で製造したもの)や商品(仕入れたもの)ごとの売上数量、総売上高をExcelなどで抽出し、毎月作っている形式の表にまとめます。
これは、速報という段階で、この数量と総売上高は月初の割と早い段階で分かります。
②純売上高の算定(値引・割戻の集計)
次に行うのが、売上値引・売上割戻の集計です。
簿記をやったことがある方ならイメージしやすいと思いますが、本社や子会社は、自社の製商品の仕入先に対して、より多く仕入れてくれたら何割かキャッシュバックするよ(かなりざっくりとした説明です)という決まり事を作ります。これが値引割戻です。
総売上高から値引割戻を抜いたものが純売上高なので、その計算のために値引割戻の金額を求めるというわけです。
値引割戻も数量や総売上高と同様に、システム上で集計され、出力されます。
しかし、数量や総売上高と違うのは、製品や商品ごとの値引割戻金額は分からず、全製商品合計の金額しかわからないことが多いという点です。
その場合に行うのが按分計算です。
按分計算とは、数量や金額など、ある基準を設けて、その比率で合計金額を分けていくというものです。
例えば、A製品(販売数量1,000,000個)、B製品(販売数量2,000,000)、二製品合計の値引割戻金額が3,000,000円という販売データがあり、数量を基準に按分する場合、
A製品の値引割戻金額=3,000,000(円)×(1,000,000/(1,000,000+2,000,000))=1,000,000円
B製品の値引割戻金額=3,000,000(円)×(2,000,000/(1,000,000+2,000,000))=2,000,000円
となります。算数でやった比の計算です。
①でシステムから抽出したA製品の総売上高が10,000,000円、B製品が15,000,000円だとすると、
A製品の純売上高=10,000,000-1,000,000=9,000,000(円)
B製品の純売上高=15,000,000-2,000,000=13,000,000(円)
のように、製品ごと個別の純売上高が分かるのです。
③売上総利益(粗利)の算定(売上原価)の算定
②で求めた純売上高から売上原価を引いたものが売上総利益(粗利)です。
粗利は、経営層がとても気に掛ける数値なので、大切です。
作業としては②と同様に、システムで出力されたデータをもとに、各製商品に原価を按分で振っていきます。
ただし、売上原価には、製造原価・仕入・棚卸廃棄損など、多くの勘定科目があるため、手間がかかります。
例えば、その集計の結果、売上原価がA製品4,000,000(円)、B製品6,000,000(円)だった場合、
A製品の粗利=9,000,000-4,000,000=5,000,000(円)
B製品の粗利=13,000,000-6,000,000=7,000,000(円)
と分かります。
さらに、純売上高に対する粗利の比率(粗利率)を求めると
A製品の粗利率=(5,000,000/9,000,000)×100=55.6%
B製品の粗利率=(7,000,000/13,000,000)×100=53.8%
とわかり、単純比較で、B製品よりA製品の方が、利益に貢献する力が大きいということが分かります。
このようなデータを経営層に提示することによって、経営層はA製品に対する「販促をもっと行おう」などという判断をすることになります。
新卒で経理部に配属されたら
売上担当者が売上総利益(粗利)までを算定したら、次の担当者たちによって、営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益が計算されていき、財務諸表が作られていきます。
売上を担当すると自社の製商品に関する知識や、市場の動向に詳しくなれますし、自分が作った資料が経営判断に使われるので、やりがいも生まれます。
売上担当になったら、特に自社製品に関心を持つようにして、業務に役立てられるようにしましょう。
また、簿記の資格は業務に直結するので、取得すべきです。
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